「紡ぐ・ビジョン・MATCH -まちの未来をソウゾウする-」 ~活用事例~ その3(高校生向けの大学プレ授業・まちづくりWSでの活用)

「紡ぐ・ビジョン・MATCH -まちの未来をソウゾウする-」活用事例
(ゲームの内容・作成の経緯・データダウンロードはこちらのページをご覧ください)

博士後期課程学生が提供する高校生向けのプレ授業


【基本情報】

日 時:2023年8月24日(木)、13時~16時(3時間)
対象地:なし(演習は京都・木屋町通を対象とした2040年のまちづくり提案)



参加者:プレ授業に応募した高校生 計5名+運営2名
主催者:吉野和泰(文責)(京都大学博士後期課程)
運 営:吉野和泰、大学院学生1名、大学事務職員1名



内 容:3日間のプレ授業・WS形式の演習を通じた、京都市・木屋町通の2040年のまちづくり提案
活 用:授業の事前課題として、Google Street Viewや現地調査をもとに、対象地となる通りやエリアの課題とポテンシャルについて整理。一方でプレ授業では、紡ぐビジョンMATCHを活用して、2040年に自分がどのようなライフスタイルを送っているか(送りたいか)を各自検討してもらい、即興プレゼン+投票を実施した。3日間の成果物として、提案された多様なライフスタイルを実現しつつ、地域課題の解決やポテンシャルの増進に資するような、道路のデザイン提案書を作成してもらい、プレゼンを実施した。


【実際の活用の様子】


K大学で毎年実施されている高大連携事業の一環として、吉野(主催者)が提供する高校生向けのプレ授業の中で、紡ぐビジョンMATCHを活用しました。

地域のアイデンティティを活かしつつ、一方で環境の変化に対応した新しい考え方を導入しながら、どのように魅力あるまちづくりを実現していくのか。本授業では、土木や建築、環境、情報など多くの専門分野が協働し、将来像を描き、実現のための仕組みやカタチを設計する「公共デザイン」をテーマに、大学での研究や社会実践の様子をレクチャーしました。

1日目は、国内外における最新の公共デザインの事例を取り上げて、ディスカッション形式の授業を実施しました。写真やビジュアルイメージをふんだんに用いた授業資料やディスカッションを通じて、高校生の皆さんが持つ「公共空間」のイメージを膨らませていきました。

2日目の演習では、価値観の多様化や技術革新が進んだ将来、自分や家族がどのような暮らし方・学び方(働き方)をしている(したい)か、紡ぐビジョンMATCHを活用してビジョンの作成と発表を行いました。課題解決型ではなく、ビジョン・ドリブンかつバックキャストで考えるという思考プロセスが、多くの高校生にとっては初めての経験となり、初めは戸惑いも。ゲームを進め、ビジョンシートの作成を2~3周進めていくうちに、次第に発想が柔軟になっていき、ワクワクするようなみらいのライフスタイルの提案をしていただきました。



実際に参加者から挙げられたビジョンシートを見てみると、例えば「複数職に付くことが、ポジティブな意味で(←重要)当たり前」になり、自分の趣味と実益を兼ねた仕事+地域への貢献・コミュニティ作りに資する仕事を、どのように実現・両立していくのか、具体的なライフスタイルの提案がありました。高校生ならではの、既存のしがらみや常識にとらわれない、一方でとても地に足がついていて納得のいく、活き活きとしたアイデアがたくさん挙がりました。
また、高校生にとってはあまり聞き馴染みのない「グリーンインフラ」や「官民連携」などの重要なキーワードについて、自ら調べ、参加者同士で議論し、自分のアイデアの中に組み込んでいく、主体的な学習プロセスを経験する機会にもなりました。ビジョンシートへの「投票」を通じて、参加者同士の議論がより活発になり、お互いの価値観やまちづくりの考え方にまで深堀りすることもできました。


1日目2日目の取り組み内容をもとに、3日目は実際に京都・木屋町通を対象に、2040年の将来像(まちのみらい)を検討し、2班に分かれて提案を行うデザイン演習を行いました。単なる課題解決型の提案ではなく、2日目に参加者同士で議論したみらいのライフスタイルをもとに、それを実現していくためにどのような方法やプロセスの可能性があるか、という視点でコンセプトメイキングを進めていきました。


最終プレゼンの質疑応答では、それぞれの思い描くみらいのライフスタイルが、提案にどのように反映されたのか、そこで起こっている(と想定される)社会の変化や価値観の転換について、より踏み込んだ議論を行いました。「実現可能性」は一旦頭の片隅に置いておいて、どのように人を惹きつけ、共感を呼び、納得してもらえるのか、という点にフォーカスしてアドバイスを行いました。ライフスタイルやビジョンをもとに、プロセスデザインやプログラムの考案、具体的なかたちのデザインにまで落とし込むことの面白さと難しさを実感してもらえる機会になったのではないかと思います。

【紡ぐビジョンMATCHで遊んでみた感想】


・最初は多くのカードを見て自分なりのストーリーをつくれるか不安だったが、実際にやってみると続々とつながっていきとても楽しかった。また、ライフスタイルから産業など多岐にわたる条件が、自分の考えに一ひねりを必要として面白かった。
・将来どのような暮らしをしたいかというアイデアをもとに、自分たちの現在の暮らしを改善することができる。一旦目標を定めて、そこに向かって何をすればいいのか、というフェーズを踏むことができるので、達成具合などの評価がしやすくなると思った。
・都市・地域の将来像を考えるということは、単にデザインや技術の進歩を考えるだけではなく、自分も含め人々のライフスタイルを考えることでもある。自分はどこでどうやって生きていて、理想的な生活はどんなものか、それを実現させるために今なにするべきか逆算することができる。将来のことを考えるのは、”今”をみつめなおすことに意味があると思う。
・将来像を考えなければ、今と進歩が無いままになると思うので、実現はできなくても考えることが重要だと思う。考えていくことで現状の問題点も目に見えてくるので、都市・地域の発展につながると思う。
・自分の地域や暮らしというものに関心が持てた。特に今は若者の選挙の投票率が低い中で、ゲームを通して”こんな暮らしがしたい””こんな制度がほしい”という興味の種が芽生えて、より選挙や政治に関心が持てるようになると思った。